SHIROBAKOの魅力をいま語るなら

この記事は SHIROBAKO Advent Calendar 2016 11日目 として書きました。

さて SHIROBAKO ですが、TV放送当時のことを少し思い出すと前評判は決して高いとは言えない状況だったように思います。話数が進むごとにその影響の輪を広げていき、尻上がりに人気を得ていると評されるのを見かけたものですが、その実、第1話からメチャクチャ面白いのです。第1話から第3話までが最初の盛り上がりで、いちばん好きな場面かもしれません。ということで序盤を振り返りながら、その魅力について書いて行きたいと思います。

ネタバレしか無いので、ダメな人は引き返してください!

登場人物それぞれの出発点

5人の女子高生がアニメーション同好会として、文化祭で同人アニメ上映を目指すシーンから始まる物語。交わされる会話から、各々が進路としてアニメ制作に携わる夢を持っていることが伺えますが、ここでの若々しさとキラキラ具合は聞いているこちらが恥ずかしいぐらいで、そういうころもあったよなぁ…という懐かしさがあります。

文化祭での上映までこぎつけた5人は、再びこのメンバーで集まってアニメ制作を実現するんだという誓いをドーナツと共に立てますが、その瞬間、場面は切り替わり、夢に満ちた女子高生の表情は、疲れの濃くてクマのめだつ社会人のそれへと移ってしまうのでした。ほんと仕事してるとそういう顔になるんだよなぁ。それでもみゃーもりが、おそらくドーナツの誓いを叶えられる場所に近づいているであろうこと、それから現実の厳しさにも直面しているであろうことを同時に描いたこの切り返しにとても惹き込まれたのをよく覚えています。

SHIROBAKO を通じて知るアニメーション制作

とくに序盤では、テンパりがちな新人制作進行のみゃーもりを通してアニメ制作工程の説明が多くなされていきますが、たくさん存在する登場人物名には担当作業も併せて表示されますし、なにより皆のキャラクターが立っていて視聴していると自然に名前と役割を覚えてしまいました。また、第3話で起こるFTPサーバが落ちてしまって… という展開は実際の出来事をモデルにしているそうです。*1

ここらへんは「アニメーション制作の今がここにある!」という宣伝文句そのものだと思いました。各話放送終了後に「アニメ業界の者だけど「SHIROBAKO」xx話を詳しく説明する!!」なんていう2chスレが必ず立っていて、そこで詳細な説明を眺めるのが楽しみの1つだった人も多いのではないでしょうか。

第1話は作画監督の瀬川さんに無理を頼んだ結果、彼女が倒れてしまいそれ以降の話数の進行が綱渡りになってしまうという、みゃーもりに訪れる最初の試練が描かれたところで終わります。感想として、胃がキリキリするとか、アニメを見てるのに落ち着かないといった声が多かったのも他人事ではないリアル感があったからこそでしょう。

突然のカーチェイス

一方で、リアルな現場感とは対比的な演出もたくさん出てきます。第1話で突然始まるドリフトと派手なジャンプを交えてのカーチェイス。初めて見た時は驚きが先行してなんじゃこりゃ!と笑ったものです。作り手の遊び心で大した意味もないのかもしれませんが、アニメを作るアニメというメタな視点からするとそれ以上のメッセージを感じてしまうというのは、少し入れ込みすぎでしょうかw

あるぴんはいます!

そんな展開は第2話でもすぐに訪れます。

ギリギリのスケジュールのなか、監督の木下さんの脳内設定が飛び出し無茶な差し替えの話がポッと出てくるも、演出の山田さんは引き下がらず、ラインプロデューサのなべPはぶん投げ、さていったいどうなるのやらと不穏な空気が流れたところで「大事なことだと思うんです。」の声とともに、設定をみんなで見返しましょうと切り出すみゃーもり。

集まった制作陣を前に演説は苦手だという木下監督も、意見を交わすうちに次第にノッてきて、劇中劇「えくそだすっ!」登場人物のあるぴんについて熱く語りだす。次第に周囲も惹き込まれて盛り上がりは最高潮というところで、あるぴんはいるんだよ!と叫ぶ監督とみゃーもりに呼応するように "存在しないはずのあるぴんがみんなの前に姿を現すシーン" が描かれています。このシーン、めちゃくちゃ好きなんですよね。

カーチェイスにしてもあるぴん登場のシーンにしても、ある意味で雰囲気を崩すような演出が選ばれているところに、先のシーンの木下監督のことばが重なります。

記号的な表現ばっかってキレイでも飽きるよ?挑戦、挑戦!新境地!!アニメーションってテンプレの代名詞か?違うだろ。命を吹き込むってことだろ!?」

みゃーもり達と SHIROBAKO 制作陣と視聴者と

ここまでが第二話までの内容です。部分的かもしれないけれど夢を叶えたみゃーもりも道半ばであることを知り、様々な困難に直面する様子がその後も描かれていきますが、彼女たちと同じ仕事を選んだ SHIROBAKO 制作陣に重なるようであり、働いている人たち、夢を見て追いかけている人たちにも重なるようで、たくさんの人に共感を生んだのではないでしょうか。そして、その構造だけではなくて、演出の一端に笑わせられながら、見ている人を楽しませようという気持ちやそれを楽しみながらやっているだろうなという姿勢までも感じとれる内容になっていると思います。

さいごに

元々このような体裁を取ろうと思った理由は、序盤の数話がとても好きだしそれで記事を書けたらラクだろうという思惑もありました。結局のところ、それらを見返した回数で言えば、全24話通して見れた気もしますw まだ SHIROBAKO を見てない人にも伝わるように書いたつもりなので、視聴するキッカケになったりしたら嬉しいです(おかげで大変だった…)

SHIROBAKO の魅力を再認識したので、残りのアドカレを見つつまた最終話まで通しで見ようと思いました。

おまけ

第2話から流れる SHIROBAKO 1期エンディングテーマの Animetic Love Letter の歌詞を引用して終わりたいと思います。

好きな気持ちを伝えるには
ずっと想い続けるしかない
気ばかり焦るけれどこつこつ ひとつひとつ
一週間にいちど会える日は
朝からなんだかそわそわして
他の誰かに 悟られそう